春山海事法務事務所

春山海事法務事務所は、「海と船に関する海事代理士業務」と「児童館・学童クラブの運営コンサルティング」を行っている事務所です。

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1級小型船舶操縦士免許取得まで
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 ここでは私が1級小型船舶操縦士免許を取得するまでのあれこれについてご紹介します。私の場合、旧4級から更新して2級・特殊・特定へ、そして失効し1級を取得して免許を復活させたという経緯をたどっています。特に現在2級小型船舶免許を所持している方の参考にしていただければと思います。なお、このとき私は海事代理士ではありませんでしたので、記載記事の内容が海事代理士らしからぬものとなっております。一般人としての記事としてご覧いただければ幸いです。

1. 2級免許が失効!

 うっかりしていました。気がついたのが免許の有効期限の1週間後。私は船を持っているので、このまま乗船してしまったら免許証不携帯で最大で10万円の罰金となってしまいます。船の免許はそうそう日常的に使うものでないから、どこか「まだ大丈夫だろう」という気がおきてしまいます。また、車の免許証と違って「そろそろ免許の書換時期ですよ」というお知らせのハガキが届くことはありません。そんなこともあって、うっかり忘れてしまうのです。しかも、失効しても免許されていない状態になるだけで、資格そのものが剥奪されるわけではないので、その分更新への緊張感が足りなくなるのかもしれません。私もその口でした。(当事務所ではこの体験を教訓に「船舶免許更新リマインダーサービス」を行っています)

2. 失効再講習を受講しようかなぁ

 免許をうっかり失効させてしまったら、「失効再交付講習」を受講して免許を復活させるしか方法はありません。そこで、ネットで検索し各所で開催されている失効再交付講習を探してみたところ、個人申請で手続きを行うにしても12000円くらいかかります(講習料・印紙代・身体検査料)。海事代理士に依頼したのなら+5250円かかります(現在当事務所は2800円で実施しています)。それに運輸局までの交通費と証明写真代、平日一日分の休みを考えたら、失効再交付は20000円くらいかかるので、「こりゃまた大変なことだ。同じお金を出すのなら免許証に付加価値をつけたい。何か別の方法はないものだろうか。」と思案することになりました。つくづく更新を忘れなければよかったと反省しました。

3. そうだ、1級免許を取ろう

 「同じ2万円出すのなら、そのお金で1級を取れないものだろうか。」・・・そんなことをふと思いました。そこで国土交通省のホームページで試験料金を確認したところ、身体検査料3200円+学科試験料5900円の合計9100円で試験が受けられることが分かりました(2級→1級ステップアップの場合)。それに、1級のテキスト代を鑑みても自己学習ならなんだかんだでも20000円あれば1級が取得出るではないかと思い、1級免許を取得することによって失効再交付手続きに代えようとしました。同じお金を出すなら、そのままの免許より1つステップアップした免許のほうがいいですもんね。ただし、リスクはあります。それは「試験に不合格になってしまう」というリスクです。試験に不合格になってしまったら、また9100円を支払って再受験しなければなりません。私はなんとしてでもそうならないよう、必死に勉強することにしました。

4. 1級免許の自己学習

 まずはAmazonで関連テキストを入手しました。
 購入したテキスト
 
「小型船舶操縦士 学科教本Ⅱ」,JEIS著
舵社,1249円

「ステップアップのための一級小型船舶
操縦士試験問題(模範解答と解説) 」,片寄
洋一著,成山堂,2100円
 
「初心者のための海図教室」,吉野秀男著,成
山堂,1890円

「ボート免許・学科試験問題集 1級小型
船舶操縦士(上級科目)」,舵社,840円
 これをもとに何度も何度も読み返して、勉強しました。主な内容は以下のとおりです。
 上級運航1 航海計画     出航前準備  航海計画・情報収集・出航前整備点検 
 航海計画 海図・水路書誌・航路・航海計画表 
 航海 進路・速力・船位測定・流潮航法・航行中や寄港地での注意 
 航海計器 レーダー・音響測定器 
救命設備
通信設備 
救命設備   
救命用通信設備 無線電信・救命設備・航海用具 
気象海象   気象の諸要素 気圧・前線・雲・霧・視程・波浪 
気象予測 気象情報・天気図・観天望気・台風 
潮汐・海流 潮汐・潮流・海流 
荒天航法
海難事例  
荒天航法 荒天準備・荒天航法・避難港 
台風避航 台風の右半円・左半円・避航 
海難事例 乗揚げ・衝突・転覆・火災 
上級航海2 機関の
保守整備   
内燃機関 ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、4スト、2スト
出力、燃料消費率と航続距離・航続時間 
系統と整備 燃料油・潤滑油・冷却水・空気・電気・動力・操舵 
機関故障  ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、動力伝達装置
操舵装置、異常  
 学科はやはりそれなりに難しい内容です。特に機関に関して言えば、車いじりが好きでエンジンをばらした経験のある方でしたらあまり苦しくないと思いますが、ボンネットも開けたことのないような方ですと、何がなんだかさっぱりなはずです。また気象に関して言えば、概して皆さん不得意のようです。だから薄っぺらなテキストだからといって侮らずに、しっかりと学習することが大事になります。はっきり言ってナメてかかると不合格になります。

5. 海図を使った問題

 1級小型船舶操縦士免許試験の最大の特徴といえば、やはり海図を用いた問題を解くことでしょう。試験問題のうち3問が海図を使った問題が出ます。そしてこの海図を使った問題が難問なのです。試験のテクニックとして、こうした海図問題を最初から捨てて他で点数を取るということもできますが、他の問題が海図問題に比べて易しいかといえばそうでもありません。だからすべての問題に対応できるように準備をしておくのが不合格になるリスクを減らす最大の近道だと思います。また、実際に航海に出て海図も読めないようでは「1級小型船舶操縦士」として恥以外の何者でもありませんし、とても危険な航海になります。今ではGPSを使った電子海図が普及し、コンパスやディバイダー、三角定規を用いて海図に線をつけ航海することは少なくなりつつありますが、それでも電子機器を過信してはいけませんし、様々なリスクに対する保険をかけておかなくてはなりません。陸上とは違い海上は命の危険がすぐやってきます。自分や同乗者の命を守るためにも海図を使いこなせることは必須のことと思います。
 というわけで、私は本格的な「海図用のコンパス」「海図用のディバイダー」「海図用の三角定規」を購入して揃えることにしました。また、練習用海図はテキストの付録としてついているのですが、できれば試験当日配布されるものとまったく同じ「本物の練習用海図」で練習するようにしましょう(当事務所でも1000円で販売しています)。
購入した海図用具と海図

三角定規
 
コンパス

ディバイダー
 
練習用海図
 <購入に当たっての注意>
  三角定規・・・トレース用のなるべく大きいものを選んでください
  コンパス・・・少なくとも150mm以上のなるべく長いものを選んでください
  ディバイダー・・・長い距離を測ることもあるのでコンパス以上に長いものを選んでください
 ちょっとした文房具の専門店なら「海図用の三角定規・コンパス・ディバイダーをください」といえば分かるはずです。それが通じなければ、「製図・トレース用の・・・」といえば分かります。それで通じなければその文房具で買うのはやめましょう。ただし街中の小さい文具店では取り扱っていなかったり、取り寄せになることが多いです。そのため、購入には十分時間の余裕を見て注文するようにしましょう。
 なお、ネットでの購入という手もありますが、私は実際に手にとって選ぶことをお勧めします。というのも、三角定規はともかく、コンパスやディバイダーは粗悪なものが多すぎます。「安物買いの銭失い」という諺を思い出して、もし万が一ネットで購入するのなら、できるだけ高価な高品質のものを購入するようにしましょう。はっきり言って、安物のコンパスやディバイダーでは全く海図には使えません。というか、問題が解けずに不正解になってしまうこともあります。自分の命を預ける道具だと思えば、100円ショップでは買わないでしょう。1000円のものでも不安になることでしょう。
 東京に住んでいる方などは「東急○ンズ」のようなお店があるからと安心していませんか?私も最初はハ○ズに買いに行きましたが、海図にふさわしいものはありませんでした。また銀座に「IT○Y○」という老舗文具店があるのですが(私の母が製図をしていてよくそこで製図用具を購入していた/おそらく東京で一番大きく専門的な文具店)そこにも海図にふさわしいコンパス・ディバイダーの在庫はありませんでした(カタログによる注文販売)。結局のところ、そのときは我慢して建築科の学生が使うようなコンパスとディバイダーを購入しましたが、それでも三角定規とコンパス・ディバイダーあわせて8000円くらいになったと思います。だから「ちゃんとした海図用のコンパスとディバイダーは入手困難である」ということを肝に銘じていただければと思います(当事務所では有料でレンタルを行っています/1ヶ月2000円送料別)。

5. 試験当日の朝

 試験会場は横浜でしたので、横浜まで車で試験を受けに行きました。集合時間より1時間も早く着いたので、試験会場玄関前でゆっくりと朝食を車内で食べながら、最後の試験勉強をしていました・・・が、どうも様子が変なのです。試験会場の正面玄関なのに、受験生が誰一人として建物の中に入っていかないのです。私は「日にちを間違えたか」それとも「会場を間違えたか」と不安になりましたが、何度受験票を確認しても、また会場となった施設の住所や名称を確認しても間違いはありませんでした。しかし試験開始15分前にもなって誰一人としてその建物の中に入っていかなかったので、いよいよこれは絶対に何かあると思い、建物の周りを回ってみました。そうしたら駅から建物に向かうその道路上に特定小型無線機を抱え腕章をした怪しい人がいるのです。私は思い切ってその方に声をかけ「すみません、今日の小型船舶の学科試験会場はこちらで間違いないですか?」と聞いたところ、その腕章をしていた係員はあわてた表情で私に紙を一枚渡し、無線で本部らしいところに「いま受験生1名ご案内しました。受験番号○○番の春山勝さん。今こちらからそちらに向かいますので、もしかしたら間に合わないかもしれませんが対応お願いします、どうぞ。」なんていう会話が・・・そしてもらったA4の紙を見ると「試験会場変更のお知らせ」と書いてある。何が起こったかわからないが、どうやら当日になって試験会場が変更になったようだ。「万が一当日会場変更になったのなら、もともとの会場入り口に掲示するか担当者が案内すればいいのに」なんて思ったが、ほとんどの受験生は電車で来るのでそれにあわせて駅からの道端で案内していたようだ。試験会場となる予定だった施設の駐車場を利用していた私はその案内担当者とはすれ違うことなく時間が過ぎていたようである。まあ兎にも角にも試験時間に遅れてはいけないので、あわてて変更した試験会場に走って向かった。おかげで余裕だった時間もぎりぎりとなり、走ったせいで汗がびっしょりになってしまった。まぁ、こういうこともあるので、皆さんが受験されるときも注意してください。

6. 試験会場と模範解答

 試験会場はホテルの大ホールで行われた。人数もそこそこいた(150人くらい)ので、大きい会場に変更になったのかなと思った。受験生は私のような1級のステップアップが10名ほど、最初から1級狙いが3名ほど、特殊のみが10名ほど、あとはほとんどが2級の受験生であった。ステップアップは試験問題が一部しかないので、他の受験生より早く試験が終わります。私は退出可能時間にはもう問題をすべて解き終わり、5回ほど解答の確認も済んでいたので、真っ先に退出してしまいました。
 試験の模範解答が不要な人はもうそれで終了なのですが、私は合否がすぐ知りたかったので、模範解答が配布される全科目終了時間まで昼ごはんでも食べながら待つこととしました。そして、全試験科目終了5分前くらいに、会場外のテーブルに「バーァッ」と模範解答が置かれました。早速それを手にし、歩きながらひとつひとつ答え合わせをしていきました。結果は合格でしたが、満点合格でなかったのが悔しかったです。なんと海図問題を一つ間違えてしまったのです。ちょっと悔しかったですが、でもなんとか自己採点で合格だつたので、ホッとし、その日は横浜で遊んで帰りました。

7. 合格通知と免許証発行

 試験当日の模範解答で合格ラインに届いていたのが分かっていたとしても、もしかしたらマークシートの記載ミスや受験番号の記載ミスなどあったかもしれないと不安なものです。本物の合格通知が届くまでは安心できない日々が続いていました。しかし、きちんと届きました、合格通知が。
 そしてその合格通知を持って、早速お台場にある関東運輸局の東京支所へ向かいました。晴れて即日免許証が発行され、無事1級の免許証を手にすることができました。


8. 結局のところ、失効再交付とステップアップとどっちがよかったのか。

ステップアップ
(自己学習・個人申請)
1級小型船舶操縦士学科試験手数料   9450円
 普通為替手数料  420円
 テキスト代  6079円
 海図・海図用具代  約8000円
 登録免許税  2000円
 交通費(受験・免許申請)ほか  約4000円
 小計 約30000円
失効再交付
(個人申請)
 失効再交付講習  9450円
 身体検査料  800円
 失効再交付印紙代  1250円
 交通費他  1500円
 小計 13000円
 こう比べてみれば、ステップアップのほうが高くなったが、海図用具をレンタルしたりすればもう少しその幅が縮まったかと思います。まぁ、のちのち1級を取得する予定があるのなら、失効再交付ないし更新のタイミングがベストタイミングだと思います。どっちにしろ、1級を取得するときに30000円はかかってしまうのですから。
 なお、ここで記載したコストは実際のトータルコストです。よく教習所や練習場で「○○万円で免許とれます」と宣伝していますが、実際はそのほかにも印紙代や免許税、写真代、健康診断書発行費用、そして試験会場や教習会場までの交通費や昼食代など関連コストもかかってしまいます。そうした関連コストも合わせたトータルコストで検討してみることが必要でしょう。
 結論としては「ステップアップ」して良かったと思います。今現在2級を所持している方で、更新や失効再交付を控えている方、そしてさらにいつかは1級を取得したいと思っている方は、是非ステップアップをチャレンジしてみてください。コストパフォーマンスがもっとも優れた選択になると思います。
 なお、当事務所でも2級から1級へのステップアップ講習を完全予約制で行っています。ご興味のある方は是非お問合せください。